ある谷に、はい虫の男の子クニットがすんでいました。ひとりぼっちで、夕方、家じゅうのあかりをともします。自分で弱虫と思っていて、夜が怖いのです。あるとき、朝が明けるとクニットは家を飛び出します。
「だれかクニットをなぐさめてあげて!」
クニットが行く先には、知ってる人は誰もいませんでした。ヒリフヨンカは馬車で過ぎていきます。ホムサは車で走っていきます。ミムラねえさんもミイもいますが、だれもちいさくて、石のうしろにかくれているクニットをなぐさめてはくれません。
重いカバンを持ったクニット、何も持っていない身軽なスナフキンがメロディを奏でています。
クニットがとぼとぼ、ヘムレンさんは打ち上げ花火、その周りでホムサたちが遊んでいます。
クニットは、浜辺できれいな大きい白い巻貝をみつけました。けれども、そのことを話す人がいません。
海で小さな小瓶をみつけたクニット、小瓶の中には、はい虫の女の子のスクルットの「どうか見つけて!」の手紙が入っています。クニットは、怖いモランからスクルットを助けに行かなければと、勇気をふりしぼります。「こわくなんかないぞ!」
モランと戦ったクニット・・・。クニットとスクルットは、ただじっと見つめ合いました。
孤独と出会いについて、クニットとスクルットの心の中を感じながら読める絵本です。作者のトーベ・はヤンソンはムーミンでも有名です。この絵本もムーミン絵本の中の一冊です。
『さびしがりやのクニット』トーベ・ヤンソン作,渡部翠訳.講談社.2019年.ISBN978-4-06-514913-3