靴屋さんに小さな見習い職人がいました。名前はフラピッチ。人にやさしく、親切な子どもです。勇気も知恵もあります。
ムルコニャ親方は冷たい人で、いつもフラピッチを怒鳴りつけます。反対に、奥さんはいい人でした。
フラピッチは、親方の元をはなれて、旅に出ようと思い立ちます。旅のかっこうは、緑のズボンに赤いシャツ、素敵なブーツに輝く帽子、肩にかけた赤いかばんです。ずいぶん、派手な変わったかっこうですね。犬のブンダシュもあとから追いかけてきました。
フラピッチは困っている人を見かけると、必ず助けてあげます。「皇帝が、息子のためにブーツをはきならしてくるように、そして帝国内で困っている人がいたを助けるようにと、僕を使いに出したのです。」と、フラピッチは言います。本当のことではありません。
旅の途中で、ギタという少女と知り合います。ギタはサーカスの一座の子でいろんな曲芸ができます。緑のオウムも肩にのせて連れていました。体の具合が悪くなって、一つ前の宿に置いて行かれたのです。今はとっても元気です。
二人とブンダシュ、オウムは、一緒に旅を続けます。悪い人たちとも出会います。市場に立ち寄った時には、大勢の人たちの中に、悪い人たちもいました。けれど、勇敢なフラピッチは知恵を使って、悪い人たちと戦います。
物語には、いろんな伏線があります。ムルコニャ親方はどうして、冷たいすぐ怒る人になってしまったのか、どうして市場に行きたがらなかったのか・・・。
最後に、二人には幸せが待っていました。
この本を書いたイワナ・ブルリッチ=マジュラニッチは、1874年4月18日、クロアチアのオグリンに生まれました。そして、ザグレブで亡くなりました。母親として子どもたちの文学的興味と結びついて、クロアチア児童文学に大きく貢献する女性作家となりました。代表作は『昔むかしの物語』や、この『見習い職人フラピッチの旅』です。二度(1931年、1938年)もノーベル賞候補にあがりました。
『見習い職人フラピッチの旅』イワナ・ブルリッチ=マジュラニッチ作,山本郁子訳,二俣英五郎絵.小峰書店,2006年.ISBN978-4-338-22201-3