ルドルフとイッパイアッテナ

児童文学

 ねこのルドルフは、ある日、ししゃもをぬすんでしまったてめに魚屋に追っかけられる羽目に。逃げ込んだところは長距離トラックの中でした。ルドルフは、魚屋が投げたモップか何かが頭にあたって、気を失ってしまいました。トラックの運転手が高速でお金を払った光景だけを覚えていて、そのあと夢の中へ。飼われていた家のエリちゃんの声が・・・。
 夢から覚めると知らない街についていました。そこは東京でした。そこで出会った強そうな大きなトラねこは、意外にやさしく面倒を見てくれました。そのトラねこの名前はイッパイアッテナ。変わった名前ですね。というのは、いろんな人にいろんな呼び方をされているからなのです。
 生きるためにいろんな知恵と教養を身に着けているイッパイアッテナと、帰りたいけど住所がわからない小さい黒ねこのルドルフ。それぞれが生きるために苦労をして、生きる力を身に着けていきます。そこに飼いねこのブッチーもからんできて、ねこたちの世界も、人間の世界に置き換えてみると、自分たちの周りでも共感できるできごとや心の葛藤が鏡のように映し出されてきます。
 イッパイアッテナと一緒に暮らすうちに、いろんな人間との関係、ねこ同士の関係を経験して、か弱かったルドルフが成長していく物語です。

 作者の斉藤洋さんはこれが初めての作品で、第27回講談社児童文学新人賞を受賞されています。

『ルドルフとイッパイアッテナ』斉藤洋 作 杉浦範茂 絵 講談社  1987年
ISBN 978-4061335059

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